お料理カルト

美味しい料理とは何かを探す料理狂の備忘録

煮物の件

女子とかに「料理上手に見える料理教えてください!」と
言われることが結構あるんだけど、
そういう時はだいたい「煮物」をお勧めしている。

とりあえず、間違いなくお袋の味感あるし、
野菜いっぱい取れちゃったりして、
家庭的な料理上手アピールできそうじゃない?というわけだ。

その上、煮物は失敗が非常に少ない料理の一つ。
肉焼いたり、パスタ作ったりするのと違い、
手際が出来不出来にあんまり影響出ないし、
基本的な分量と手順守れば、まず失敗することはない。

そんなわけで、今回は煮物の話。


煮物のよくある失敗例
とりあえず、煮物のゴールイメージを固めるところから考えたいので、
煮物でよくある失敗をある程度列挙してみる。

・野菜が固すぎる
・野菜が崩れちゃってる
・魚とか肉が臭い
・味が濃すぎる
・味が薄すぎる
・味がまずい

という感じで、素材周りの下処理と、
調味料の配合ミスの2パターンに分けられるんだよね。
逆に言えば、この2つをクリアすれば、ほぼ失敗しない。


調味料の配合
まずは簡単な方の調味料の配合。

醤油1:酒1:みりん1:砂糖1:だし10

以上。細かい調整はともかくとして、だいたいこれでOK。
分量にすると、各大さじ1を入れたら150ccのだし入れ流イメージ。
これを各入れる食材で組み合わせると良い感じになる。
以下がチートシート

・野菜
野菜は、それ自体が旨味が少ないので、旨味を感じれる調味料が欲しい。
甘みを抑えたい時は砂糖抜いても良い。

醤油1:みりん1:砂糖1:だし10

・魚
魚のうまみは肉より弱い。風味の繊細な感じとかも殺したくないが、
魚自体の臭みを取りたいと考えるので、

醤油1:酒1:砂糖1:だし10

・肉
肉は旨味も強く、雑味も強い。とにかく臭いを消すことと、
雑味(旨味)を増やさないことを意識する。

醤油1:酒1:砂糖1:水10

角煮みたいな超濃い味を作る時は水5。
野菜と一緒に炊く時は下ごしらえをして、
醤油1:酒1:みりん1:砂糖1:だし10
みたいに炊いても良い。


まとめると、出汁150ccにつき、各調味料大さじ1
何を使うかは、食材ごとに決めるんだけど、
どうしようかなーとわからなければ検索して調べるか、
醤油1:酒1:みりん1:砂糖1:だし10
で味を調整しても大丈夫。大失敗にはならない。


食材の煮方
あとは煮る順番や手順だけ覚えておく。

1.煮えにくいもの(硬いもの)から順番に煮る。
2.8割くらいまで煮えるまで塩味(醤油や塩など)は入れない。
3.魚とか肉とか臭いの強いものは下処理しておく。

この3つやるだけで超変わる。

1.煮えにくいものから煮る
硬い人参の煮物とか、美味しくない。
ごぼうも生煮えは辛い。というわけで、
このあたりのものから煮始める。

逆に葉物野菜は、
本当に最後に食べる分だけ、さっと入れるようにする。
なんども温め直しとかやってるとクタクタになっちゃう。

2,塩味は後半に入れる
塩は極力最後に入れる。最初に入れると浸透圧の関係で、
材料の水分が外に出てしまってふっくらしあがらなくなる。
しおっしおに凹んだ大根とか、ときどき出くわすことあると思うが、
あれは強い塩分で長時間煮込んだ結果、大根の水分が外に出た状態。

ある程度、煮上がってから塩は調整するといい感じになる。


3.肉と魚は下調理をする。
あと肉と魚を使う場合は、あらかじめ臭みを取っておきたい。
魚なら、お湯をかけておいたり(霜降り)
肉なら、フライパンで焼いて脂だしと表面に焼き色をつけるみたいな
ことをやっておくとぐっと美味しくなる。

調理の片付け方

料理が好きな男性は増えてきているが、とかく聞くのが片付けができないということ。
片付けできないがゆえに、奥様をはじめとした女性から嫌がられたりする。

自分も昔は片付けが苦手だったのだが、厨房で働いたときに、
先輩から考え方を教えてもらい片付け方が上手になった。


料理を趣味にするためにも料理の片付けをマスターしていただきたいと思う。


○使ったものは元の場所に戻す。
まず、時間があまり重要視されない工程では
片付けまで含めて1工程と考えるのが大事。例えば、

1.ソースを作る
2.フライパンで焼いて、ソースを絡める。

という工程があった場合、まず「ソースを作る」ために醤油とか砂糖とかオイスターソースとかを出して作ることになると思う。
さらに、大さじ/小さじ、測り、ボウルなども使うだろう。その場合、ソースを作り終わった時点で

・調味料は規定の場所に戻す。
・使った測りなどは規定の場所に戻す。
・使ったサジなどは洗って洗いカゴに入れる。

までをやってから2のステップに行くようにしよう。
「次の工程で「塩」使うから、そのままにしておこうかなー。」
という気になる気持ちはわかるが作業スペースは有限なので、
こまめに元の場所に片付けた方が結果、効率が上がる。
常に元の場所に戻すを意識しよう。


○台拭きを活用しまくる
キッチンを衛生的に保つためにも台拭きは超大事アイテムだ。
作業工程の隙間ができたら、台拭きでキッチン台を拭く。
火にかけてる間、少し時間ができたらキッチン台を拭く。
切り物が終わったらキッチン台を拭く。
飛び跳ねを見つけたらキッチン台を拭く。

とにかく、拭いて拭いて拭きまくるのをお勧めしたい。
汚れがきれいなツールや食材に着くことを避けることで、効率も上がる。


○洗ったものは拭いて棚に戻す
洗い物が干しカゴにパンパンに入っていると、置く場所がなくなり効率がわるい。
水滴が切れるまで放置したい気持ちはわかるが、さっさと拭いて戻した方が効率が良い。
食洗機などを使っている場合も同様。
洗い物などの作業を行ったあとの置き先を確保してから洗い物を始める方が効率的だ。


○空き時間を考えて行動する。
例えば、お湯を沸かすまで5分暇になったとする。
その場合、5分間で何ができるかを考えて行動すると料理がうまくなる。
例えば、5分あればタレを合わせるくらいのことができるし、
別の野菜をレンジにセットしたり、野菜を切ったりすることもできる。
では、ニンニクが香り出るまで1分であればどうか?
シンクに溜まった食器を洗ったり、皿を拭いたりできるだろう。
こうやって、工程の空き時間を別のことに使えるようになろう。

おいしいってなんだ?(後編)

前回は、おいしいのが味覚以外の領域に影響を受けやすいという事を書いた。
後編の今回は、もう少し味覚にせまってみたいと思う。

旨味と塩の話

「甘味、塩味、酸味、苦味、旨味」が基本の五味。
これに加えて「渋味」とかを6個目の味覚に入れたりする。
だいたいの料理の味はこの組み合わせで作られる。
(唐辛子などの刺激味やアルコール味などは入ってくるが)


その中で、おいしさと関係が特に深いのは字の通り「旨味」である。


しかし、旨味はちょっと厄介な性質を持っていて、
単独だと「旨い」として認識ができない。
試しに、味の素を舐めてみても変な味としか思わないはずだ。


しかし、この旨味が適切な量の塩と結びつくと旨味として機能し始める。
ラーメンが人を魅了するのは「大量の旨み」と「大量の塩」の塊だからというのは有名な話だ。


塩の適量の話

次に、塩の分量を考えてみたい。
実は食べる温度や他の味(甘味、酸味、苦味、旨味など)によって
分量が変わるのだが、一般的な暖かい出汁をベースで考える。


まず、僕らはなぜ食事を取っているかというと、生きるために必要だから摂取している。
塩に関しても、超重要な成分で人は塩なしではすぐに死んでしまう。
しかし塩が強すぎれば、それを吸収するために希釈しなければならず、
たくさんの水が必要となる。


だから、体に吸収する際、そのまま吸収しやすい塩分の水溶液を「おいしい」と
感じるように舌の機能は発展したと言われている。
つまり人体の塩分濃度はおよそ0.85%と言われており、
僕らがおいしいと感じる塩梅は、その分量が基準となる。


味覚の相互作用

最後に味覚同士がぶつかるとどうなるかという話をしたい。
旨味を感じるためには塩味が必要と最初に書いたが、
それ以外も味覚同士は色々と相互作用を持っている。
ざっくりと列挙していく。


・酸味は塩味の感覚を鈍らせる
塩っぱい時に酢をかけると食べられるようになる。

・甘味は苦味を和らげる
コーヒーに砂糖を入れると苦くなくなる。

・甘味は酸味と別々に来ると強める
ケーキを食べた後のいちごが酸っぱくなる。

・塩味は甘味を強化する
スイカに塩をかけると甘くなる。

・低い温度では、甘味・酸味が感じにくくなる。
苦味と塩味については変化がないため、相互作用が働きにくくなり、塩味や苦味が感じやすくなる。
(同じ塩分濃度だと冷たいスープとかの方がしょっぱく感じる)


他にも色々とあるので詳しくは「味の相互作用」などで検索し
調べてもらえば面白いものを読めると思う。

塩に慣れる、脂に慣れる、辛味に慣れる

前回、美味しさとは過去の体験であると書いたが、
実際の味覚も経験に依拠するところが大きい。


「ハマるほどおいしい」という感覚は、ベータエンドルフィンが脳内から
どばーっと出る時に起こる。ラーメンを毎食食べてしまう。
ご褒美にケーキを食べたい。とにかく焼肉が大好き。
このような感覚はすべて「βエンドルフィン」の仕業である。


・旨味(アミノ酸)を大量に塩ととった(どばー)
・脂肪を大量にとった(どばー)
・唐辛子の辛いのにハマってる(どばー)


といった具合に、脂肪/旨味/辛味はβエンドルフィンを大量放出してくれる。
逆にそれに慣れ親しんでしまうと、今までのものでは物足りなくなり、
より大量の「脂肪/旨味/辛味」を求めてしまう。
実に恐ろしいが、これらは量を減らして戻していくしかない。




【参考文献】
・コクと旨味の秘密(新潮社)
・味覚と呈味成分との関係 
http://www.saltscience.or.jp/symposium/4-hatae.pdf
・依存症を作りだす脳内麻薬“βエンドルフィン”とは
http://matome.naver.jp/odai/2136283408907844001

おいしいってなんだ?(前編)

「おいしい」とは、なんだろうか?
皆さんは、どんなものを「おいしい」と思うだろうか?


サシの入った高級な和牛のステーキ?
銀座の一流の職人が握ったお寿司?
香港の屋台で食べた汁そば?
お母さんが作ってくれたカレー?


などなど、いろんなものを思いつくだろう。
逆に大人になると「まあ美味しいけど、それなりよね」という経験も増えてくる。


そこで、僕らは何を「おいしい」と感じて食べているのか?
ということを最初に紐解いてみようと思う。
「おいしい」というゴールが見えないのに、料理を美味しく作ることなどできないからだ。

味覚は全感覚の1%程度

だいぶ前の出典となるのだが『産業教育機器システム便覧』によると、

五官による知覚の割合は
視覚器官が83%
聴覚が11%
臭覚3.5%
触覚1.5%
最後の味覚が1.0%だそうだ。

1972年のため、現在は多少割合に変化はあるだろうが、
直感的に考えてみても、大きくそんなに変わることはないだろう。
つまり情報を取得する際は「圧倒的に視覚有利」ということを覚えておく必要がある。
さらに、香りや舌触りの触覚の方が純粋な「味」よりも感覚として上位というのもポイント。


確かに、生野菜などは味がほのかにしかしなくても、
香りがよく食感の良ければ、それでおいしいと感じることも経験的に理解できる。


また、見た目が重要視されるケーキの専門学校の記事(※1)では

「わぁ!美味しそう!」と皆さんが、感じるのは、以前に美味しかったという記憶に残っている情報検索と、今、目の前にある料理を比較し、その時の美味しさより上回るかを予測し、視覚によって得た美しさにより、「きっと美味しいはず!」と認知しているのです。

としており、視覚の重要性を説いている。


【この段落のまとめ】
・「美味しそうに見える」というのは最も大切なことの一つ。
・純粋な「味」よりも、「香りや食感」が実は優位感覚。料理を作る上で常に意識が必要となる。


おいしいは経験と記憶に左右される。


小学生の頃からビールがおいしいという人はいないように、
最初からパクチーが大好物という人が少ないように、
おいしいはかなりの部分、経験によって作られている。


料理の見た目や内容、食べたシチュエーションなどを記憶と照らし合わせて
「あのレストラン美味しかったから、きっと今回もこのくらいおいしいだろう」とか
「普通の海の家なのに、ここのラーメン、やばいおいしい!」とか言ったりする。


全く食べたことのないジャンルや味の想像のつかない料理は別としても
ほとんどの料理は「過去とくらべてどうか?」で判断される。


時として、過去に好きだった片思いの恋人のように、記憶補正がかかって
「昔は美味しかったのに、全然ダメだな」なんてことも珍しくない。


つまり、誰にどんなシチュエーションで、料理を出すのか?は、おいしさに直結した問題と言える。
例えば、レストランのように「誰が来るか?」までは推測できない場合、
似たようなレストランで食べた場合よりも良い方向で予想を越えさせれば良い。


逆に家庭料理を専門とする僕のような人間は、食べる人の情報も加味して作ることが可能だ。


例えば、ご飯を食べに来る友人がBBQが好きな人であれば
炭で焼いた極厚肉のおいしさは知っているだろうし、
海の地方の出身の人であれば、とれたての魚介のうまさも知っているだろう。
はたまた、ラーメン二郎をこよなく愛する人に薄味の料理は出さないだろう。


つまり、彼ら・彼女らにどんな料理がおいしいと思ってもらえるか、
それらを想像してメニューを構築すると、
「おいしい」に近づけるヒントになるのではないだろうか。


【この段落のまとめ】
・料理の「おいしい」は、食べ手の「過去のおいしい記憶」との戦い。
・家庭料理を作る人は、食べる人個々人まで掘り下げた「おいしい」を考えることができる。



今回はこのくらいで筆を置きたい。
次回は、「おいしい味覚」を考えることを書いてみたいと思う。

※1)
料理は目で食べている? | 栄養士・調理師・製菓衛生師の学校:兵庫栄養調理製菓専門学校

料理の構築と組み立て

長いこと増田で様々なレシピを書き連ねていたが、
本日から「料理の構築と組み立て」について自分のブログで書こう思う。



以前から料理のレシピや手順を教えてくれる人はたくさん居るのに、
なんで料理科学をベースに教えてくれる人は少ないんだろうと思っていた。
また、研究者の方で料理科学の研究論文はたくさんあるのだが、
いずれも超学術的な記載のため、普通読み解くのがとても難しい。



僕は、どちらかというとその中間の橋渡し。
「美味しい」の構築と組み立てを、「手順とコツ」という形でなく
「ロジカルな分析」でレシピの構築を行ってみたいと考えている。
しかし、あまりにも学術的な難しい話は、専門の研究者の方にお任せし、
彼らの研究成果の一部をご紹介するような形で作っていこうと思う。



ニュアンス的には「ためしてガッテン!」や「男のパスタ道」くらいというと伝わりやすいだろうか。
この後、どんな記事が投稿されるかについては、最近書いた2つの匿名ダイアリーを参考にしていただければだいぶ理解いただけるかと思う。


anond.hatelabo.jp
anond.hatelabo.jp



それでは、料理の構築と組み立て方、開設いたします。